「〇〇(下の名前)、あれやっといて」

上司からそう呼ばれるたびに、胸の奥がザワッとする。そんな経験、ありませんか?

悪意はないのかもしれない。でも、なぜか素直に受け止められない。周りは「さん」付けなのに自分だけ呼び捨て、なんてケースだと、モヤモヤはさらに深くなりますよね。

この記事では、なぜ呼び捨てに違和感を覚えるのか、パワハラ・セクハラに該当するライン、そして角を立てずに伝える具体的な手順まで、一気に整理していきます。読み終わる頃には「明日、どう動くか」がはっきり見えているはずです。


呼び捨てにモヤモヤする本当の理由とは

「気にしすぎかな」と自分を責める人、多いんですよね。でも、そのモヤモヤには、ちゃんとした理由があります。

こうした「気にしすぎかな」という感覚が積み重なって悪循環に陥ってしまうケースについては、「嫌われてる気がする」は思い込み?悪循環のメカニズムと今日から使える脱出法でも詳しく触れているので、あわせて読んでみてください。

上下関係が固定されてしまう

呼び方は、関係性そのものを映す鏡です。ソースネクストの小嶋智彰社長は、先輩が後輩を呼び捨てにする組織について「上下関係が固定されてしまう」「実力がある若手を抜擢したときお互いがやりにくくなる」と指摘しています。呼び捨てという行為には、思っている以上に上下関係を固定する力があるということです。

「対等に扱われていない」という無意識のサイン

さん付けで呼ばれると、続く言葉も自然と丁寧になるものです。逆に呼び捨てだと、命令口調がセットになりがちなんですね。同じ内容の指示でも、「〇〇さん、お願いできますか」と「〇〇、やっとけ」では、受け取る側の心理的負担がまるで違います。ここが肝心なポイントです。

女性の場合はセクハラの懸念も

下の名前を呼び捨てにされる、しかも他の(男性)部下は「さん」付けなのに自分だけ、というケースだと話は別です。上司が女性部下を親密すぎる呼び方で呼んだり、他の部下と扱いに差をつけたりする場合は、セクハラの可能性も出てきます。「気のせいかも」で片付けず、違和感の正体を言語化しておくことが最初の一歩です。


それってパワハラ?厚生労働省の判断基準

「呼び捨て=パワハラ」と単純には言えません。ただし、条件次第でハラスメントに該当する可能性は十分にあります。

厚生労働省のパワハラ防止指針では、職場のパワハラは「①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」という3要素をすべて満たすものと定義されています。逆に言えば、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指導は該当しません。

さらに踏み込むと、呼び方そのものも指針の対象に含まれます。指針にある「他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう努めること」という一文について、この「言動」には呼称や言葉遣いも含まれると解説する専門家コラムもあります。つまり、呼び方への配慮は建前ではなく、指針上も求められている行為なんですね。

パワハラに近づく典型パターン

パターン具体例該当しやすさ
人前での呼び捨て+叱責「おい、〇〇!何やってんだ!」と怒鳴る精神的攻撃に近づきやすい
特定の人だけ呼び捨て他は「さん」付けなのに1人だけ「お前」差別的・侮辱的と判断されやすい
頻度・継続性が高い毎日、業務外の場面でも呼び捨て就業環境の悪化と見なされやすい
業務指示のみで呼び方は通常「〇〇、資料できた?」程度該当しにくい(適正な範囲)

線引きは正直、グレーです。だからこそ「これはパワハラだ」と決めつけて相手を責めるより、「私はこう感じている」という事実ベースで伝える方が、話がこじれにくいといえるでしょう。


上司が呼び捨てにする5つの心理

伝え方を考える前に、相手の頭の中を覗いておくのも悪くありません。理由が分かれば、対策も立てやすくなるからです。

  1. 権威を示したい:呼び方で上下関係を確認したい、無意識の支配欲求
  2. 親しみのつもり:本人は「距離が近い証拠」だと思っている、悪気なしタイプ
  3. 昔からの習慣:自分が新人の頃からそう呼ばれ続けてきた、それを疑ったことがない
  4. 単純に無自覚:呼び方が相手にどう響くか、考えたこともない
  5. 威圧で仕事を回したい:呼び捨て+高圧的な口調で、部下を動かそうとするタイプ

厄介なのは3番と4番です。悪意がない分、指摘されると「そんなつもりじゃなかった」と驚かれることが多いんですね。だからこそ、感情的にぶつけるより、冷静に事実を伝える方が効果的だといえます。


直接伝える人向け|角を立てない4ステップ

「もう我慢の限界」という人向けに、実際に使える伝え方をステップで紹介します。

ステップ1:モヤモヤを言語化する

漠然と「嫌だ」ではなく、「先輩や年上の同僚より年下なのに下の名前で呼ばれるのは違和感がある」「仕事の場では敬称で呼んでもらう方が集中できる」など、具体的な理由まで書き出しておきましょう。ここを飛ばすと、いざという時に言葉に詰まります。

ステップ2:タイミングと場所を選ぶ

上司が忙しい時や機嫌が悪い時は避け、周りに聞かれない会議室や個室のような場所を選びます。人前で指摘すると、上司にとっても「恥をかかされた」という感情が先に立ってしまうんですよね。1対1、落ち着いた時間帯。これが鉄則です。

ステップ3:敬意を添えて伝える

いきなり本題に入らず、「いつもご指導いただきありがとうございます」といった前置きや、「お忙しいところすみません」という謝意を示してから本題に入るのがコツです。伝えた後は「ご理解いただけると嬉しいです」と締めると、相手も受け止めやすくなります。

例文のイメージはこんな感じです。

「お忙しいところすみません。実は、名前の呼ばれ方について少し相談があります。〇〇と呼び捨てにされると、正直少し身が縮こまってしまって……。仕事にはしっかり向き合いたいので、できれば『〇〇さん』と呼んでいただけると、私自身も落ち着いて動けそうです。」

言葉選びに迷ったときは、シーンに応じたフレーズのバリエーションを知っておくと安心です。ビジネスシーンでの言い回しを増やしたい人は、暑い日に使えるビジネスの言葉20選|シーン別フレーズと選び方の基準も参考になりますよ。

ステップ4:それでも言いにくいなら「呼び返す」

面と向かって切り出すのが難しい人には、上司から呼ばれたら笑顔で受け流しつつ、自分から「〇〇さん」と苗字+さんで呼びかけ返すという搦め手もあります。相手に気づきのきっかけを与える、いわば「鏡返し」作戦ですね。地味ですが、意外と効くケースがあります。


言っても変わらない時の対処法3選

伝えても改善されない。そんな時にどうするか、ここも押さえておきましょう。

  • 第三者を通す:上司の直属の上司や人事に「相談」という形で持ちかける。上司を非難する言い方は避け、あくまで相談ベースで進めるのがポイントです
  • 社内外の窓口を使う:社内外の相談窓口に頼ることで、一人で抱え込まず客観的な解決策が得られます
  • 距離を置く選択肢も検討する:改善の見込みが薄く、心身への負担が大きいなら、異動願いや転職も視野に入れていいと思います

我慢し続けても、状況は自然には良くなりません。むしろストレスが積み重なるだけ、というケースの方が多い印象です。動くタイミングを逃さないようにしたいですね。


まとめ|「不快」と感じたその感覚を大事にしていい

上司の呼び捨てが嫌だと感じるのは、決してわがままではありません。上下関係を固定させる力があり、場合によってはパワハラ・セクハラの領域に足を踏み入れることもある。それだけの重みを持つ行為だということです。

大事なのは、モヤモヤを放置しないこと。そして、伝えるときは感情ではなく事実ベースで、敬意を添えて。それでも変わらないなら、一人で抱え込まず周囲や外部の窓口を頼る。この順番さえ押さえておけば、きっと道は開けます。

あなたが「気持ちよく働ける環境」を選ぶ権利は、最初から手の中にあります。


免責事項

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を行うものではありません。パワーハラスメント・セクシュアルハラスメントに該当するかどうかは、行為の状況や継続性、職場の環境など個別の事情によって判断が異なります。深刻に悩んでいる場合や、状況が改善しない場合は、会社の相談窓口、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、または弁護士・社会保険労務士など専門家への相談をおすすめします。