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ひとりメシの美学 #07 喫茶店モーニング

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休日の朝、7時半。

いつもなら、もっと寝てる時間。でも、今日は目が覚めた。

窓の外は、まだ朝の優しい光。

せっかく早く起きたんだもの。

今日は、モーニングに行こう。

あの喫茶店。駅前の、昭和から続いてる喫茶店。

支度をして、家を出る。

朝の空気が、心地いい。

第一章:喫茶店という時代

駅前の商店街を歩く。

まだ開いてない店が多い。シャッターが下りてる。

でも、あの喫茶店は開いてる。

「喫茶 朝日」

昔ながらの看板。少し色褪せてるけど、それがまたいい。

扉を開ける。カランカラン、とベルが鳴る。

「いらっしゃいませ」

マスターの声。落ち着いた、低い声。

店内に入ると、タイムスリップしたみたい。

木のカウンター、赤い椅子、壁には古い時計とカレンダー。昭和の香りが、そこにある。

客は数人。新聞を読んでいるおじさん、スマホを見ている若い男性。みんな、静か。

窓際の席が空いてる。

「あちらの席、いいですか?」

「どうぞどうぞ」

第二章:モーニングという選択

席につく。

テーブルには、砂糖壺、灰皿(使われてないけど)、そして小さなメニュー。

モーニングサービス。

コーヒー450円で、トーストセット付き。

トースト、ゆで卵、サラダ、ミニヨーグルト。

これで450円。信じられない。

「モーニングセットと、ホットコーヒーをお願いします」

「かしこまりました。トースト、バターとジャムどちらにされますか?」

「バターでお願いします」

「少々お待ちください」

マスターが厨房へ。

待つ時間。

窓の外を見る。朝の商店街。まだ人通りは少ない。でも、徐々に街が目覚めていく。

この静かな時間が、好き。

第三章:コーヒーという目覚め

「お待たせしました」

まずコーヒーが運ばれてくる。

厚手の白いカップ。ソーサーの上で、湯気が立ち上ってる。

ああ、この香り…

コーヒーの香りが、鼻をくすぐる。苦くて、深い香り。

一口、飲む。

んー…

苦い。でも、嫌な苦さじゃない。

深煎りのコーヒー。しっかりとした味わい。目が覚める。

体が、内側から目覚めていく感じ。

朝のコーヒーって、特別よね。

一日の始まりを告げる、儀式みたいなもの。

第四章:トーストという幸せ

「トーストです」

来た。

木のトレーに乗せられて、モーニングセットが運ばれてくる。

トーストが二枚。きつね色に焼かれて、湯気が立ち上ってる。

その上には、バターのかたまり。熱々のトーストの上で、ゆっくりと溶けていく。

黄色いバターが、じわじわとトーストに染み込んでいく様子。

この瞬間、好き。

横には、ゆで卵。殻付きのまま、小さな器に入ってる。

サラダは、キャベツの千切り。シンプル。

ミニヨーグルトも添えられてる。

完璧な布陣。

トーストを手に取る。まだ温かい。

バターが溶けて、トーストの表面がキラキラしてる。

一口。

サクッ…

外はサクサク、中はふんわり。

バターの塩気と、パンの甘み。シンプルなのに、完璧。

噛むと、バターの香りが口の中に広がる。

トーストって、こんなに美味しかったっけ。

いや、違う。

喫茶店のトーストだから、美味しいの。

家で焼くトーストとは、何かが違う。

第五章:ゆで卵という儀式

ゆで卵を手に取る。

殻を剥く。コンコンとテーブルに当てて、ヒビを入れる。

ペリペリと、殻を剥いていく。

真っ白な白身が現れる。ツルンとした表面。

二つに割る。

ああ、完璧…

黄身が、ちょうどいい固さ。半熟すぎず、固すぎず。

テーブルにある塩を、ちょっとだけかける。

一口。

んー、美味しい。

白身のプルプル感。黄身のほっくり感。

塩のシンプルな味付けが、卵の味を引き立ててる。

ゆで卵って、シンプルだけど奥が深い。

茹で加減で、全然違う。

ここのマスター、分かってるわね。

第六章:サラダという爽やかさ

キャベツの千切りを食べる。

シャキシャキとした食感。

ドレッシングは、オーロラソース。マイルドな酸味と甘み。

トーストとゆで卵を食べた後の、この爽やかさ。

口の中がリセットされる。

また、トーストが食べたくなる。

サラダの役割って、こういうことなのね。

第七章:交互に、ゆっくりと

トーストを一口。コーヒーを一口。

ゆで卵を食べて、サラダでリセット。

また、トーストを一口。

このループ。

ゆっくりと、味わいながら。

急がない。今日は休日だから。

時間は、たっぷりある。

窓の外を見ると、商店街に人が増えてきた。シャッターが開き始めてる。

街が、目覚めていく。

私も、ゆっくりと目覚めていく。

このモーニングと一緒に。

第八章:ヨーグルトという締め

トーストとゆで卵を食べ終えた。

最後に、ミニヨーグルト。

蓋を開ける。

スプーンですくって、口に運ぶ。

酸味が、口の中をさっぱりさせてくれる。

甘すぎない、程よい酸味。

これで、完璧。

トースト、ゆで卵、サラダ、ヨーグルト、そしてコーヒー。

全部が、それぞれの役割を果たしてる。

バランスがいい。

朝食って、こうあるべきなのかもしれない。

第九章:喫茶店という空間

コーヒーを飲みながら、店内を眺める。

カウンター越しに見えるマスター。淹れたてのコーヒーを、別のお客さんに出してる。

丁寧な手つき。何年この仕事をしてるんだろう。

壁の時計。カチカチと音を立てて、時を刻んでる。

この店には、時間が違う速度で流れてる気がする。

ゆっくりと。静かに。

急ぐ人は、来ない。

ここに来る人は、みんな、このゆっくりとした時間を求めてる。

朝の喫茶店。

それは、一日の始まりを、丁寧に迎える場所。

第十章:残りのコーヒー

食事は終わった。でも、コーヒーがまだ半分残ってる。

これを、ゆっくり飲む。

一口、また一口。

冷めてきたコーヒー。でも、それもまたいい。

温かい時とは違う味わい。

苦味が、少し和らいでる。

窓の外は、もう完全に明るい。朝の光が、店内に差し込んでくる。

時計を見る。もう8時半。

1時間、ここにいたのね。

でも、1時間とは思えない。もっと短く感じた。

それとも、もっと長く感じた?

時間の感覚が、曖昧になる。

それが、喫茶店の魔法。

終章:満たされた朝

「ごちそうさまでした」

お会計を済ませる。450円。

「ありがとうございました。また来てくださいね」

マスターの笑顔。

店を出る。

朝の空気が、さっきよりも温かい。

お腹が満たされて、心も満たされて。

モーニング一食で、こんなに幸せになれるなんて。

450円。この値段で、トーストセットとコーヒー。

でも、それだけじゃない。

この空間、この時間、この雰囲気。

全部込みで、450円。

贅沢すぎる。

早起きして、よかった。

朝の喫茶店。

これが、私の新しい休日の過ごし方になるかもしれない。

一週間頑張ったご褒美に、週末の朝、喫茶店でモーニング。

そんな習慣、悪くないわね。

また来よう。

次は、ジャムのトーストも試してみたい。

そして、あのゆっくりとした時間を、また味わいたい。

朝の喫茶店は、私の秘密の場所。

一人で、静かに、朝を迎える場所。


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