土曜日の午後2時。
一週間、頑張った。仕事も、人間関係も、全部乗り越えた。
今日は、自分へのご褒美の日。
街を歩く。平日とは違う、ゆったりとした時間の流れ。急ぐ必要もない。予定もない。
ただ、ぶらぶらと。
そして、見つける。お気に入りのカフェ。
ガラス張りの外観。中が見える。温かい光。木のテーブル。観葉植物。
ああ、ここがいい。
扉を開ける。
目次
第一章:カフェという聖域
「いらっしゃいませ」
優しい声で迎えられる。
店内は、心地いい静けさ。BGMはジャズ。ゆったりとしたテンポ。
数組のお客さん。カップル、友達同士、そして一人の人も。
一人客、意外と多い。ここは、そういう店なのね。
「お一人様ですか?」
「はい」
「こちらのお席、いかがですか?」
窓際の席。外の景色が見える。完璧。
「ここでお願いします」
メニューを受け取る。
第二章:選択という幸せ
メニューを開く。
コーヒー、紅茶、ケーキ、サンドイッチ…そして、パンケーキ。
今日は、これ。パンケーキ。
プレーン、チョコレート、フルーツたっぷり、季節限定のフレーバー。
どれにしよう…
プレーンがいいわね。シンプルに、パンケーキそのものを味わいたい。
「プレーンパンケーキと、アイスコーヒーをお願いします」
「かしこまりました。お時間15分ほどいただきますが、よろしいでしょうか?」
「大丈夫です」
15分。待つ時間も、楽しみの一つ。
第三章:待つ時間の贅沢
窓の外を眺める。
道を歩く人々。それぞれの休日。それぞれの時間。
私は今、ここにいる。カフェの窓際で、パンケーキを待っている。
この時間が、贅沢。
スマホを見ない。SNSもチェックしない。
ただ、ぼーっとする。何も考えない。
店内を見渡す。
カウンターでは、バリスタさんがコーヒーを淹れている。丁寧な手つき。
隣のテーブルでは、カップルが静かに会話している。
奥の席では、一人の女性が本を読んでいる。
みんな、それぞれの時間を過ごしている。
この空間、心地いい。
ふと、厨房の方から甘い香りが漂ってくる。
バター?卵?バニラ?
これは…もしかして、私のパンケーキ?
期待が膨らむ。
第四章:運命のプレート
「お待たせいたしました。プレーンパンケーキです」
来た…!
白い大きなプレートに、三段重ねのパンケーキ。
その高さ、美しさ。まるでタワーみたい。
ふわふわに焼き上げられた生地が、優しく積み重なっている。
てっぺんには、バターのスライス。それがゆっくりと溶けて、パンケーキの側面を伝っている。まるで黄金の滝。
横には、メープルシロップの小瓶。
そして、生クリームが添えられている。ふわっと盛られた、真っ白な雲みたい。
美しい…
写真を撮る?いや、今日はいい。
今は、この瞬間を、自分の目だけで見たい。
第五章:メープルシロップの儀式
メープルシロップの小瓶を手に取る。
蓋を開けると、甘い香りが広がる。
ゆっくりと、パンケーキの上から注ぐ。
トロリ、トロリ。
琥珀色のシロップが、パンケーキの表面を滑り落ちていく。側面を伝って、プレートに広がる。
三段全部に染み込むように、たっぷりと。
この瞬間、好き。
シロップが、パンケーキの間に入り込んでいく。生地が、甘さを吸収していく。
さあ、準備完了。
第六章:最初の一口
ナイフとフォークを手に取る。
てっぺんから、一口分を切り取る。
ナイフがスッと入る。抵抗がない。それくらい、柔らかい。
切り取った一切れには、三段分の層が見える。間に染み込んだシロップも、見える。
フォークに刺す。溶けかけたバターも一緒に。
口に運ぶ。
ん…
ふわっ。
口の中で、溶ける。
噛む必要がないくらい、柔らかい。
でも、ちゃんと食感がある。ふわふわだけど、スカスカじゃない。しっとりしてて、密度がある。
卵の優しい味。小麦の香ばしさ。バターのコク。
そして、メープルシロップの上品な甘さ。
全部が調和して、口の中で幸せの花が咲く。
これよ…この味。
第七章:層を楽しむ
二口目。今度は、端っこから。
シロップがたっぷり染み込んだ部分。
甘い…でも、甘すぎない。
メープルシロップって、砂糖の甘さとは違うのよね。自然な甘さ。優しい甘さ。
三口目。真ん中あたりを。
ここは、シロップが適度に染み込んでる。ちょうどいいバランス。
パンケーキの味と、シロップの味が、均等に感じられる。
食べ進めるごとに、味わいが変わる。
てっぺんは、バターとシロップたっぷり。
真ん中は、バランスがいい。
底の方は、プレートに溜まったシロップをたっぷり吸ってる。
この変化が、楽しい。
第八章:生クリームという相棒
そろそろ、生クリームも。
フォークで少しすくって、パンケーキと一緒に。
口に入れる。
おお…
生クリームのまろやかさが加わって、更に贅沢な味わいに。
甘いパンケーキと、軽い生クリーム。この組み合わせ、最高。
生クリームが、シロップの甘さを少し和らげてくれる。口の中がリセットされて、また次が食べたくなる。
パンケーキだけ。 パンケーキと生クリーム。 パンケーキとシロップとバター。 全部を一緒に。
いろんな食べ方を試す。
これが、パンケーキの楽しみ方。
第九章:コーヒーという休憩
アイスコーヒーを一口。
キリッとした苦味が、口の中をさっぱりさせてくれる。
甘いパンケーキの後に、このコーヒー。
完璧なペアリング。
氷が溶けて、少し薄まったコーヒー。でも、それがちょうどいい。
ゴクゴク飲めるから。
コーヒーを飲んで、またパンケーキ。
この繰り返し。
甘さと苦さ。温かさと冷たさ。
対照的なものが、お互いを引き立てる。
第十章:ゆっくりと味わう
時計を見る。もう30分も経ってる。
でも、まだパンケーキは半分残ってる。
いいの。急がない。
今日は、時間はたっぷりある。
このパンケーキを、最後まで味わいたい。
窓の外では、夕方の光が差し込んでくる。オレンジ色に染まった空。
店内も、少し暗くなってきた。照明の温かい光が、心地いい。
BGMは、まだジャズ。
この空間、この時間。
全部が、私のもの。
第十一章:最後の一口
気づけば、プレートにはもうパンケーキが残っていない。
最後の一切れを、大切に食べる。
口の中で、ゆっくりと味わう。
ああ…終わっちゃった。
でも、お腹も心も、しっかり満たされた。
フォークを置く。
終章:満たされた午後
「ごちそうさまでした」
お会計を済ませて、カフェを出る。
夕方の空気が、心地いい。
体も、心も、軽い。
パンケーキ一皿で、こんなに幸せになれるなんて。
1200円。ちょっと高いかもしれない。
でも、この時間、この空間、この味わい。
全部込みで、この値段。
むしろ、お得かもしれない。
一週間頑張った自分へのご褒美。
たまには、いいじゃない。
甘いものを食べて、ゆっくりして、何も考えない時間を過ごす。
これが、私の贅沢。
ひとりメシの美学。
パンケーキを食べながら、何も考えずに、ただ今を味わう。
それが、最高の休日。
また来よう。
疲れた時、自分を労りたい時。
また、このカフェに来よう。
パンケーキが、待っててくれるから。
ひとりメシの美学シリーズ
- #06 Coming soon…
