「なぜこんなにブランドが気になるんだろう…」そう感じたこと、ありませんか?

新作バッグを買ったその日は満たされるのに、数週間後にはまた別のものが欲しくなる。SNSで友人のブランド品を見るたびに、なんとなく焦る。お金を使いすぎているのはわかっているのに、やめられない。

こういった「ブランド志向をやめたい」という気持ちを抱えている人は、実はとても多いんです。

この記事では、ブランド志向の心理的なメカニズムを深く掘り下げながら、どうすれば自分らしい価値観を取り戻せるのかを、具体的に考えていきます。表面的な「節約術」や「断捨離の方法」ではなく、心の根っこにあるものにきちんと向き合う内容にしました。


ブランド志向の心理とは?そのメカニズム

「ブランドを買う」ことの裏側にある7つの心理因子

ブランド志向は、一見するとシンプルな「高いものが好き」という話のように見えます。でも実は、その心理はずっと複雑な構造をしているんですね。

上智大学の杉本徹雄教授が女性278名を対象に行った調査では、ブランド志向を形成する心理的因子として以下の7つが明らかになっています。

因子内容
自己表現因子自分の好みやフィーリングを表現したい
優越性因子イメージアップ・優越感を感じたい
反同調性因子周りが持っていないブランドを持ちたい
話題性因子話題になっているブランドを持ちたい
逸脱回避因子異端と思われたくない
不協和回避因子買った後の後悔を減らしたい
品質評価因子品質が良く、値打ちがある

これを見ると、「ブランドが好きな人=見栄っ張り」という単純な話ではないことがわかりますよね。

後悔を減らしたい、選択に失敗したくない、という合理的な理由も確かにある。一方で、優越感を求めたい、周りから浮きたくない、という社会的な不安から来ている部分もある。つまり、一人の人間の中に「複数の動機」が複雑に絡み合っているわけです。

「無価値感」がブランド志向を加速させる理由

ここが、一番大切なポイントです。

ブランド志向の背景には、自分への無価値感があることが多い。「自分そのものには価値がない」という感覚が根っこにあると、外側に価値あるものをまとうことで「価値ある自分」を演出しようとします。これは、心理学でいう「補償行為」に当たります。

問題なのは、この補償が一時的な安心しか与えてくれないという点です。

たとえばの話をしましょう。30万円のバッグを買ったとします。買ったその瞬間は満たされる。でも1ヶ月後、その満足感は薄れていく。そして今度は別のアイテムが気になり始める。心理学者はこれを「ヘドニック適応(快楽適応)」と呼んでいます。

外側を飾るほどに、逆説的なことですが、周りのキラキラが増すぶんだけ自分のちっぽけさを感じてしまうサイクルにはまりやすいんですよ。外からいくら補充しても、内側の空洞は埋まらない。これがブランド依存の本質的な苦しさです。


ブランド志向が「やめられない」のはなぜ?

脳は「期待」に快感を感じる

「またブランド品を買ってしまった…」と後悔したことはないですか?

じつは、ブランド品の購入には脳内のドーパミン系が深く関わっています。物が届いた瞬間より、欲しいと思って探している時間の方が、脳の報酬系はより強く活性化されることがわかっています。

つまり、私たちは「所有すること」より「期待すること」に快感を感じているんです。だから、買った後に満足感が続かないのは、意思が弱いせいじゃない。脳の仕組み上、そうなりやすいというわけですね。

SNSが「比較のループ」を加速させる

もう一つ、現代特有の問題があります。

SNSです。

インスタグラムやTikTokでは、誰かが新しいブランドバッグを披露している投稿が毎日流れてきます。人は無意識に比較してしまう生き物なので、それを見るたびに「自分も持たなければ」という焦りが生まれやすい。

あるSNS依存に関する研究では、SNSを1日2時間以上使用している人は、使用していない人と比べて「自己価値を外見や所有物に依存する傾向」が約1.3倍高まるという結果が出ています。SNSが比較心理を煽り、ブランド志向を強化するサイクルになっているわけです。

「いつか手放せると思っていたのにできない」という罠

「節約しようと思っていたのに、またポチっていた」

こういう体験、共感できる人も多いんじゃないでしょうか。

これは意志の問題というより、心理的なトリガーがあることが多いです。ストレスを感じたとき、不安なとき、誰かに認められたいとき。ブランド品の購入がそのストレス解消の回路になってしまうと、やめることが格段に難しくなります。

「また買ってしまった」という自己嫌悪が、またストレスを生む。そのストレスを解消するためにまた買う。この悪循環に気づいたとき、初めて「本当に変わりたい」という気持ちが生まれるんですよね。


「健全なブランド好き」と「依存的なブランド志向」の違い

やめたい、と思うとき、まず自分がどちらのタイプなのかを見極めることが大事です。

健全なブランド好きの特徴

  • 「このデザインが好き」「この素材の質感が気に入っている」という具体的な理由がある
  • 予算の範囲内で楽しんでいる
  • 持っていなくても自分の価値は変わらないと感じている
  • 流行に関係なく、自分の審美眼で選んでいる

依存的なブランド志向のサイン

  • 「これを持っていないと恥ずかしい」「みんなが持っているから」という理由が大半
  • 買った後、罪悪感や後悔が続く
  • 買わないと不安やイライラが増す
  • 収入以上の支出が続いている(リボ払いや借金をしてでも買う)
  • 持っていても満足感が長続きしない

どちらが悪い、というわけではありません。ただ、後者のサインが複数当てはまるなら、ブランド志向があなたにとって「楽しみ」ではなく「苦しみ」になっているかもしれないですよね。


ブランド志向をやめるための5つの実践ステップ

ステップ1|「なぜ欲しいのか」を言語化する習慣をつける

欲しいという気持ちが湧いたとき、すぐに購入するのではなく、一度立ち止まってメモしてみましょう。

「欲しいと思った理由は何か?」 「今の自分のどんな気持ちを、これで埋めようとしているか?」

この問いに向き合う時間を作るだけで、衝動的な購入は30〜40%減らせるといわれています。

実際によく出てくるのは「誰かに認めてほしかった」「職場でストレスを感じていた」「友人のSNSを見て焦った」といった答え。それに気づけるだけで、消費行動はぐっと変わってきますよ。

ステップ2|SNSとの付き合い方を意識的に変える

まず試してほしいのが、「比較を生みやすいアカウントのミュート」です。

フォローをやめるのが難しければ、ミュートで十分。SNSを使う時間自体を1日30分以内に制限するのも効果的ですね。SNSを見る時間が減ると、自然と「焦り」を感じる機会も減っていきます。

ステップ3|「真の富裕層」の行動パターンを参考にする

ここが、多くの記事では語られない面白い視点なんですが。

実は、本当の富裕層はあまりブランドで着飾らないことが多いんです。ユニクロや無印のようなシンプルな服を日常で着て、お金を投資や経験に使う。「何を持っているか」ではなく「何ができるか、何を知っているか」に価値を置いているわけです。

ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』の著者モーガン・ハウセルはこんなことを言っています。「高級車を見て、その車に乗っている人を尊敬する人はほとんどいない。みんな車を見ているだけで、ドライバーを見ていない」と。

これは刺さる言葉ですよね。ブランド品で周りに尊敬されたいと思っていても、実際には思ったほど誰も見ていない、という現実。

ステップ4|「所有すること」より「経験すること」に投資する

心理学の研究では、モノへの投資より経験への投資の方が、長期的な幸福感を高めることが一貫して示されています。

たとえば、20万円のバッグを買うのと、20万円で国内外を旅行するのでは、1年後の「幸福感の残存量」が明らかに後者の方が高い。モノは慣れてしまいますが、体験の記憶は劣化しにくいからです。

「ブランド品に使っていたお金で、何を経験できるだろう?」と考えてみると、選択肢が広がりますよ。

ステップ5|自己肯定感の根を「外」ではなく「内」に張り直す

これが最も根本的で、最も大切なステップです。

ブランド志向の本質が「外側で自分の価値を証明しようとする行動」だとすれば、解決策は「内側から価値を感じられるようになること」しかないんですよね。

そのための具体的な方法として、臨床心理学の観点から特に有効とされているのが3つあります。

① 毎日「できたこと日記」をつける 寝る前に3つ、その日に「できたこと・やれたこと」を書き出す。小さなことで十分です。「朝ちゃんと起きた」「ランチを自炊した」でいい。これを続けることで、「何かを持っていなくても自分はやれている」という感覚が少しずつ育っていきます。

② 「自分が好きなこと」で時間を満たす ブランド品を探してSNSをスクロールする時間を、自分が純粋に楽しめることに置き換えていきましょう。趣味でも、運動でも、友人との会話でも。「買い物以外で満たされる時間」を積み重ねることが、依存的な消費行動を自然に減らしていきます。

③ 「誰に認めてほしいのか」を特定する じつは、ブランド志向の背景には「特定の誰か」や「ある集団」に認められたいという気持ちが隠れていることが多い。その「誰か」が明確になると、そもそもなぜ認められたいのか、という本質的な問いに向き合いやすくなります。


「ブランド好きをやめる」ことの本当の意味

勘違いしてほしくないのですが、ブランド品を楽しむこと自体は悪いことじゃないんです。

品質の良さに惹かれて使う、デザインが純粋に好き、自分へのご褒美として大切に使う。そういったブランドとの向き合い方は、むしろ豊かな消費の姿といえるでしょう。

「やめたい」のは、ブランド品そのものじゃない。**「ブランドに自分の価値を依存させてしまっている状態」**をやめたいのだと思うんです。

外側を何で飾るかに関係なく、「今の自分でいい」と思える感覚。それが育ってくると、ブランド品は「必要なもの」ではなく「楽しみのひとつ」に変わっていきます。

焦らなくていいですよ。長年育てた思考の癖は、一朝一夕には変わりません。でも少しずつ、自分の内側に価値の根を張っていくことで、必ず変化は起きていきます。


よくある質問

Q. ブランド好きを完全にやめる必要はありますか?

A. その必要はありません。「依存的な状態」を手放すことが目標で、純粋に楽しめているなら問題ありません。

Q. ブランド志向は性格の問題ですか?

A. 性格というより、育ちや環境、社会的な影響による「思考の癖」の側面が強いです。癖は変えられますよ。

Q. すぐに変えようとしてうまくいきませんでした。どうすれば?

A. 長年培った癖を変えるには、通常3〜6ヶ月以上かかると言われています。「完璧に変える」より「少しずつ変える」という視点で取り組んでみてください。

まとめ|ブランド志向は「心の声」を聞くサイン

この記事で伝えたかったことを整理しましょう。

  • ブランド志向の心理は複雑で、7つもの因子が絡み合っている
  • 依存的なブランド志向の根っこには「自己の無価値感」がある
  • 脳の仕組み上、「期待」に強く反応するため、やめにくい構造がある
  • SNSが比較ループを加速させている
  • 解決の本質は、自己肯定感を「外」ではなく「内」から育てること
  • ブランドを楽しむこと自体は問題ない。依存的な状態を手放すことが目標

「ブランド志向をやめたい」という気持ちは、もっと自分らしく生きたいというサインかもしれません。その声を大切にしながら、焦らず自分のペースで変わっていきましょう。


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参考文献・参考情報

  • 杉本徹雄「ブランド志向の心理的因子構造」上智大学
  • Morgan Housel『The Psychology of Money』(邦訳:サイコロジー・オブ・マネー)
  • 根本裕幸「ブランド志向・虎の威を借りたくなる心理」心理カウンセラーブログ
  • NYU Michael Solomon博士によるアクセサリーと成功見込みに関する研究