アドラー心理学を子育てに活かす方法|「勇気づけ」が続かない3つの理由と場面別フレーズ集
子育てをしていると、「アドラー心理学」という言葉を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。『嫌われる勇気』のヒット以来、「ほめない」「叱らない」というキーワードとともに、子育て中のママ・パパの間でじわじわ広がってきました。
ただ、実際に試してみると「理屈はわかるけど、子どもの前に立つとできない」「3日で元の言い方に戻ってしまった」という声も少なくありません。私も最初は、本を1冊読んだだけで子育てが一気に楽になると思い込んでいました。実際はそう単純ではなかったんですね。
この記事では、アドラー心理学の基本をおさらいしつつ、多くの解説記事があまり触れていない「なぜ続かないのか」という核心部分、そして場面別に使える声かけのフレーズまで、実践的にお届けします。読み終えたころには、今日からの子育てに使える小さな一歩が見えてくるはずです。
目次
アドラー心理学とは?子育てとの関係
アドラーってどんな人?
アドラー心理学は、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870年〜1937年)が生み出した心理学です。フロイト、ユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」のひとりとされていて、『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著)の世界的ヒットによって、日本でも広く知られるようになりました。
第一次世界大戦に軍医として従軍し、心を病んだ兵士たちと向き合った経験から、アドラーは「人はどうすれば幸せになれるのか」という問いを深めていったと言われています。
子育てを支える2つのキーワード
アドラーが大切にしたのが「共同体感覚」という考え方です。人は誰かと支え合い、信頼し合うことでこそ幸せを感じられる、という思想ですね。
子育てにこれを当てはめると、親子は上下関係(縦の関係)ではなく、対等な「横の関係」を結ぶことが理想とされています。この横の関係を築くカギが「勇気づけ」です。結果だけを評価する「ほめる」、行動を否定する「叱る」のどちらでもなく、子どもの努力や過程そのものに目を向けて言葉にすること。それがアドラー式子育ての土台になっています。
なぜ「ほめない・叱らない」が大事なのか
「ほめるのがダメなら、何も言わなければいいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。結論から言えば、それは違います。
ほめ続けることの落とし穴は、子どもが「ほめられるかどうか」を行動の基準にしてしまうことです。たとえばテストで100点を取った子を「100点すごいね!」とほめると、次に90点を取ったとき、子どもは「自分はダメだった」と感じやすくなります。本当は90点でも十分な成果のはずなのに、です。
一方、叱ることにも同じ危険があります。「なんでできないの?」という言葉は、子どもの中で「自分には価値がない」という感覚に変換されやすいんですね。アドラー心理学ではこれを「勇気くじき」と呼びます。
そこで使われるのが、結果ではなく過程に注目する声かけです。「100点だったね」ではなく「最後まで集中して頑張ったね」。「なんでできないの」ではなく「どこで困っているのか教えて」。この置き換えひとつで、子どもに伝わる意味がまったく変わってきます。
「勇気づけ」が続かない3つの理由
さて、ここが多くの解説記事があまり触れていない部分です。理論はわかった、でも実際には3日で元の「叱る子育て」に戻ってしまう。私自身、最初の頃はまさにこのパターンでした。
実は、これは特別な人だけが感じる壁ではありません。多くの人が同じところで立ち止まっています。なぜそうなるのか、理由は大きく3つあります。あなたにも当てはまるものがあるか、確認してみてください。
理由1:勇気づけが「もう一つのほめ言葉」になっている
「すごいね」を「えらいね」に言い換えただけで、結局は子どもの行動を親が評価する構図のままになっているケースです。これではアドラー心理学が目指す「横の関係」にはなっていません。
理由2:即効性を期待してしまう
勇気づけは、子どもの内側からやる気を育てる方法です。叱るほどの即効性はありません。今日言って今日変わるものではないので、3日試して「効果がない」と感じてやめてしまう人が多いんですね。
理由3:親自身に余裕がない
仕事や家事で疲れているとき、丁寧な声かけを考える余裕はなかなか持てません。理論を知っていても、実践できる心の余白がないと続かない、というのが正直なところです。
もし「余裕がない」状態がもう何ヶ月も続いていると感じるなら、声かけの工夫より先に、その状態自体を見直すサインかもしれません。ワンオペ育児の限界サインと脱出法では、その限界ラインの見極め方を詳しく紹介しています。
つまり続かないのは「やり方が悪い」のではなく「人間だから当然」のことだったりします。この前提を持っておくだけで、ずいぶん気持ちが軽くなるはずです。
課題の分離を見極める3つの質問
アドラー心理学には「課題の分離」という考え方があります。「これは誰の課題か」を見極めることで、親が抱え込みすぎる悩みを減らす考え方です。
「これは誰の課題なんだろう?」と迷った経験はありませんか?ただ、「課題の分離」と言われても、実際の場面でどう判断すればいいのか迷うものです。そこで、判断に使える3つの質問を整理してみました。
| 質問 | 着目するポイント |
|---|---|
| ①最終的に結果を引き受けるのは誰か | 宿題をしないと困るのは子ども自身か、親自身か |
| ②これは「心配」か「困る」か | 親の感情が「心配」なら親の課題。生活に具体的な支障が出るなら相談の余地あり |
| ③子どもは助けを求めているか | 求めていないのに口を出すと、信頼を損ねやすい |
例えば「宿題をしない」という場面。最終的に困るのは子ども自身であり、親が無理にやらせても学力にはつながりにくいとも言われています。一方、「友達を叩いた」という場面は相手や周囲に実害が及ぶため、親が関わるべき場面に変わってきます。
すべてを子どもに任せるわけでも、すべてに親が介入するわけでもありません。この線引きを意識するだけで、「やらせなきゃ」という焦りがすこし減るはずです。

場面別「勇気づけ」フレーズ集
理論はわかっても、とっさの場面で言葉が出てこない。これもよくある悩みです。日常でよくある5つの場面別に、勇気づけの声かけ例をまとめました。

| 場面 | NGになりやすい言葉 | 勇気づけの声かけ例 |
|---|---|---|
| イヤイヤ期で靴を履かない | 「早くして!」 | 「靴、自分で履きたいんだね。どっちの足からいく?」 |
| 兄弟げんか | 「お兄ちゃんなんだから」 | 「2人ともどう思ってるか、聞かせてくれる?」 |
| テストの点数が下がった | 「なんで下がったの」 | 「ここまで取り組んできた過程、見てたよ」 |
| 朝なかなか起きない | 「もう何回言ったと思ってるの」 | 「自分で起きられる方法、一緒に考えてみようか」 |
| お手伝いをしてくれた | 「えらいね、すごいね」 | 「ありがとう、助かったよ」 |
ポイントは、評価する言葉(すごい、えらい)を、感謝や事実を伝える言葉(ありがとう、見ていたよ)に置き換えることです。たったこれだけで、子どもに伝わる温度がぐっと変わります。
それでも怒ってしまった日の対処法
ここまで丁寧な声かけの例を紹介してきましたが、正直に言うと、私自身いまだに毎日できているわけではありません。
ある日の夕方、疲れた状態で同じことを3回言ったのに片付けてもらえず、つい大きな声を出してしまったことがありました。子どもが泣き出す声を聞きながら、玄関に立ったまま「今日も失敗したな」と落ち込んだのを覚えています。
その夜、先輩ママに相談したら「100点の子育てしてる人なんていないよ」と言われて、肩の力がふっと抜けたんですね。
アドラー心理学が前提としているのは「人間は不完全である」ということです。これは子どもだけでなく、親自身にも当てはまります。怒ってしまった日は、その日のうちに「さっきは大きな声出してごめんね、ママも疲れてたんだ」と伝えるだけで十分です。子どもは、親が完璧であることよりも、ちゃんと向き合おうとする姿勢のほうを見ているものです。
「今日も失敗したな」という気持ちがなかなか抜けず、何度も同じことを考え込んでしまう日もあるでしょう。そんなときは、負の思考スパイラルから抜け出す実践ガイドで紹介されている考え方の整理法が役立ちます。また、子育てと仕事の両方で気が休まらない日が続いているなら、子持ちパート主婦のストレス発散法10選も気分転換のヒントになるはずです。
毎日100点を目指す必要はありません。10回のうち1回、勇気づけの声かけができたら、それで十分な前進だと考えて良いはずです。焦らなくて大丈夫ですよ。
まとめ:今日からできる小さな一歩
アドラー心理学を子育てに取り入れるコツは、完璧な実践を目指さないことに尽きます。
おさらいすると、ポイントは次の3つです。
- 結果ではなく過程に目を向けた声かけ(勇気づけ)を意識する
- 「これは誰の課題か」を3つの質問で見極める
- うまくいかない日があっても、それを前提として受け止める
今日、すべての場面でうまく声をかけられなくても大丈夫です。まずは、この記事で紹介したフレーズをひとつだけ、今日の夕方に試してみてください。その小さな一歩が、親子の横の関係を育てる最初のきっかけになるはずです。
免責事項
本記事はアドラー心理学の考え方を子育てに役立てるための一般的な情報を紹介したものであり、医学的・心理学的な診断や治療を目的としたものではありません。お子さまの発達や行動について心配な点がある場合は、自己判断せず医師・臨床心理士・スクールカウンセラーなどの専門家にご相談ください。また、ご紹介した声かけの方法がすべてのお子さま・ご家庭に同じ効果をもたらすとは限りません。お子さまの個性や状況に合わせて、無理のない範囲で取り入れてください。
