平日のお昼。12時半。
今日のランチ、何にしよう。
いつものカフェ?コンビニ?それとも…
ふと、目に入る暖簾。「天ぷら」の文字。
そうだ。今日は、ちゃんとしたものが食べたい気分。
天ぷら定食。
決めた。
暖簾をくぐる。
目次
第一章:定食屋という安心
「いらっしゃい!」
元気な声が迎えてくれる。
店内は、昔ながらの定食屋の雰囲気。カウンター席とテーブル席。壁にはメニューが貼ってある。
お昼時だから、それなりに混んでる。でも、カウンターに一つ空いてる。
「カウンターでいいですか?」
「どうぞどうぞ!」
カウンター席に座る。目の前には、厨房。職人さんが天ぷらを揚げている様子が見える。
これ、いいわね。ライブ感がある。
メニューを見る。
天ぷら定食。海老天が二本、野菜の天ぷらが五種類。ご飯、味噌汁、漬物付き。
これで900円。お得。
「天ぷら定食、お願いします」
「はい!天ぷら定食ね!」
厨房に声が通る。
さあ、始まる。
第二章:揚げる音という序曲
待っている間、厨房を眺める。
職人さんが、海老に衣をつけている。丁寧に、でも手慣れた様子。
油に入れる。
ジュワァァァ…
この音。
天ぷらを揚げる音。この音を聞くだけで、お腹が鳴る。
衣が油の中で膨らんでいく。泡が立つ。
きつね色に変わっていく様子が、見える。
揚げたて。これから、私のところに来る。
この瞬間を、リアルタイムで見られるって、贅沢よね。
海老の次は、野菜。
なす、ピーマン、かぼちゃ、さつまいも、しいたけ。
一つ一つ、丁寧に揚げられていく。
ジュワァァァ、ジュワァァァ。
この音、聞いていて飽きない。
第三章:運命の一皿
「お待たせしました!天ぷら定食です!」

来た…!
目の前に置かれる、大きなお盆。
天ぷらが盛られた皿。海老天が二本、黄金色に輝いている。野菜の天ぷらも、色とりどり。
ご飯、味噌汁、漬物。そして、天つゆと大根おろし、塩、レモン。
完璧な布陣。
天ぷらから、湯気が立ち上ってる。まだ熱々。
衣の表面が、キラキラ光ってる。油がちょうどいい具合に切れてる。
美しい…
第四章:海老天という主役
まずは、海老天から。
箸で持ち上げる。ずっしりとした重さ。大きい。立派な海老。
天つゆに少しだけつける。つけすぎない。衣がベチャッとならないように。
大根おろしも添えて。
口に運ぶ。
かぶりつく。
サクッ…
この音!
衣が、口の中でサクサクと砕ける。軽い。でも、しっかりとした食感。
そして現れる、海老。
プリッとした弾力。噛むと、甘みが広がる。海老の旨味が、じわっと染み出してくる。
衣の香ばしさと、海老の甘さ。天つゆの出汁が、全体を優しく包み込む。
これよ…これ。
揚げたての天ぷらって、こんなに美味しいのね。
サクサクの衣。その薄さ、軽さ。でも、ちゃんと海老を守ってる。完璧なバランス。
第五章:野菜という名脇役たち
次は、なすの天ぷら。
箸で持つと、柔らかい。
一口。
ジュワッ…
なすから、油がじゅわっと染み出す。でも、油っこくない。ちょうどいい。
なすのとろっとした食感。天ぷらにすると、こんなに甘くなるのね。
次は、かぼちゃ。
鮮やかな黄色が綺麗。
一口。
ホクホク…
かぼちゃの甘さが、口の中に広がる。まるでスイーツみたい。
衣の塩気が、かぼちゃの甘さを引き立ててる。
さつまいもも同じ。ホクホクで、甘くて。自然の甘さって、こんなに優しいのね。
ピーマンを食べる。
苦味が、いいアクセント。甘い野菜が続いた後の、この苦味。口の中がリセットされる。
しいたけ。
肉厚で、ジューシー。噛むと、きのこの旨味が溢れ出す。
野菜って、こんなに個性があるのね。それぞれが、自分の味を主張してる。
でも、喧嘩しない。調和してる。
第六章:ご飯という相棒
天ぷらを食べて、ご飯を食べる。
この組み合わせ。
白いご飯が、天ぷらの油っぽさを和らげてくれる。口の中がさっぱりして、また次の天ぷらが食べたくなる。
天つゆをちょっとご飯にかけて、食べる。
ああ…この背徳感。
でも、美味しい。天つゆの出汁が染み込んだご飯。
天丼じゃないけど、ちょっとだけ天丼気分。
第七章:塩とレモンという変化
二本目の海老天。
今度は、塩で食べてみる。
レモンを絞って、塩をちょっとだけつけて。
一口。
お…!
全然違う。
天つゆで食べた時とは、全然違う味わい。
レモンの酸味が、海老の甘さを引き立てる。塩のシンプルな味付けが、素材の味をダイレクトに感じさせてくれる。
こういう味変、好き。
同じ天ぷらなのに、全然違う料理みたい。
野菜も、塩で食べてみる。
なすを塩で。かぼちゃを塩で。
それぞれが、また違う表情を見せてくれる。
一つの定食で、何通りもの楽しみ方ができる。
これが、天ぷら定食の魅力よね。
第八章:味噌汁という癒し
味噌汁を一口。
ホッとする。
豆腐とわかめの味噌汁。シンプルだけど、これがいい。
天ぷらの油っぽさを、味噌汁が洗い流してくれる。
温かい汁が、胃に優しく染み込む。
ああ、体が温まる。
日本人でよかった、って思う瞬間。
ご飯と味噌汁。この組み合わせの安心感。
第九章:漬物という箸休め
漬物をつまむ。
パリッとした食感。浅漬けの、優しい塩味。
この箸休めが、大事。
天ぷらを食べて、ご飯を食べて、漬物でリセット。
そして、また天ぷら。
このループ。完璧。
昔ながらの定食って、よくできてるわね。
主菜、ご飯、汁物、漬物。
全部が、それぞれの役割を果たしてる。
バランスがいい。
第十章:完食という満足

気づけば、お皿は空になっていた。
天ぷらも、ご飯も、味噌汁も、漬物も。
全部、綺麗に完食。
お腹が、ちょうどいい具合に満たされてる。
満腹すぎず、でも満足。
これが、定食のいいところよね。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございました!」
職人さんが、にっこり笑う。
この笑顔も、ご馳走の一部。
終章:午後への活力
店を出ると、午後の日差しが眩しい。
お腹も心も、満たされた。
天ぷら定食、900円。
この値段で、揚げたての天ぷらが食べられて、ご飯も味噌汁も漬物も付いてくる。
コスパ、最高。
でも、それだけじゃない。
職人さんが、目の前で揚げてくれる。その様子を見られる。ライブ感。
熱々を、すぐに食べられる。
この体験込みで、この値段。
むしろ、安すぎるくらい。
体が、内側から元気になっていく感じ。
天ぷらの油が、エネルギーになる。野菜のビタミンが、体に染み込む。
午後の仕事、頑張れそう。
このランチが、私に力をくれた。
また来よう。
天ぷらが食べたくなったら、また来よう。
揚げたてのサクサク感。あの音。あの香り。
それが、ここで待ってる。
定食屋って、いいわね。
特別じゃない。でも、ちゃんとしてる。
飾らない。でも、美味しい。
それが、一番いい。
ひとりメシの美学シリーズ
- #07 Coming soon…
